【本日の1曲】 秦基博 / アイ
【本日の1曲】秦基博 / アイ
今日みたいな冬の天気の悪い日に、しんみりと聴き入りたい曲です。
秦基博さんの曲はベスト盤(「BEST OF GREEN MIND’09」)しか持ってないんで、たくさん知っているわけではないのですが。高校生の頃にYouTubeで見かけてから、キレイな歌声が魅力的だなぁと感じさせるアーティストさんです。
曲のタイトルが「アイ」とカタカナ表記になっていることから、色んな「アイ」の意味が込められているんじゃないかなと。その辺も注目しながら聴いてみました。
(以下、自分の好き勝手な解釈です。今日聴いて思ったことなので、明日聴いて同じことを思うかどうかすら分からないようなレベルの解釈です。)
目に見えないから 「アイ」なんて信じない
そうやって自分をごまかしてきたんだよ
- 「目に見えない」から「信じない」とされているのは、「愛」もそうだと思うし、「I(=自分)」のことでもあるかなぁと思います。愛情って、常に目に見える形で存在するわけじゃない。自分という存在だって、それを確かにしている精神が目に見えるものではないのだから、自分すら信じられない。そういうこともあるかも。
- 「そうやって自分をごまかしてきた」っていうのは、「愛」が目に見えないものだから、「本当は、愛したい・愛されたいという想いを自分が抱いていること」に対して正直になりきれていないこと。不明瞭な「愛」に対してそのような気持ちを抱いていいのだろうか、という逡巡もあるのかも。
- また、「I(=自分)」のことを信じられていないんだから、本当の自分のことなんて分からない。今の自分は、偽りの自分なのかもしれない。とすると、本当の自分をごまかしている、とも言えそう?(これは歌詞の内容とは関係ないから曲解かな。まぁそんな見方もできるかなと。)
遠く 遠く ただ 埋もれていた
でも 今 あなたに出会ってしまった
- 「遠く遠くただ埋もれていた」んですね。そうですね。埋もれていたんですね、ハイ。
- 「でも 今 あなたに出会ってしまった」から、歌の中の「僕」の世界がグワッと変わってきます。ここで思ったのが、「アイ」には「出会い」の「会い」も含まれるのかなぁと。「あなた」に出会わなければ「僕」は埋もれていたまんまなわけですからね。新しい世界との出会い。ここから、自分(と、自分の気持ち)を再発見し、埋もれた世界から浮上するわけです、「僕」は。
その手に触れて 心に触れて
ただの一秒が永遠よりながくなる 魔法みたい
あなたが泣いて そして笑って
ひとつ欠けたままの僕のハートが ほら じんわりふるえる
- 「僕」は「その手に触れて 心に触れ」ることで、「あなた」という新しい世界との出会いを経験します。
- 「ただの一秒が永遠よりながくなる」この曲の中で一番好きなフレーズです。うーむ、冬にこそこういう心情がピッタリな感じがします。
- 「あなたが泣いて そして笑って」とか、そういう時間をともに過ごせたんですね。ともにそういう命を生きたことで、「僕」の心はだんだんあったかくなっていきます。
- 「ひとつ欠けたままの僕のハートが ほら じんわりふるえる」まぁ、この段階ではまだ「僕」の心には欠けたところがあるみたいなんですけど。それでも、じんわりと心を打つ「あなた」との時間に、しみじみと感動を覚えているようです。
ありふれた日々が アイ色に染まってく
はじめからあなたを 探していたんだよ
- ここの、「アイ色」って解釈に結構悩みました。多分、藍色のことだとは思うんですけど、なんで藍色じゃなきゃダメだったのかなって思います。秦さんにとって藍色がどういう意味を持つのかなってちょっとは調べてみたんですけど、まぁそこまで尽力できませんでした(笑)たとえばもし、彼の歌の中に藍色がよく出てくるのなら、その描かれ方を詳しく見てみたいなぁ、なんて思います。
- 「はじめからあなたを 探していた」なんて、恋愛にはつきものですね。「あなたこそが運命の人!」とかいうのは都合の良い錯覚ともとれますが、逆にそういう直感的思考に依ってしか切り開けない道もあると、色々な人が色々な作品で言ってますね。ホントにありふれた話ですけど、大事なことだと思います。
遠く 遠く 凍えそうな空
そばにいても まだ さみしそうに滲んだ
- ここの情景描写は、うーん、なんかよく分からん。「遠く」と「そばにいても」ってのが対比かな。「あなた」とそばにいて一緒にくっついていても、遠くの寒空はまだ晴れずに、寂寞感を漂わせている。「あなた」とともにいても、世界すべてが明るくなるってわけでもない。今後の展開を示唆するような感じ。
ただ いとしくて だけど怖くて
今にもあなたが消えてしまいそうで 夢のように
僕を見つめて そっと笑って
瞳閉じてもまだ 伝わる温もりが たしかにあるのに
- いとしい。けど、怖い。ありますね、そういうのね。こんなほのかな幸せはずっと続くのだろうかという不安。落ち着いた愛情だからこそ、唐突に訪れる終わりに怖れを抱くことはあると思います。「今にもあなたが消えてしまいそうで」ってところにも現れていますね。
- 「夢のように」ってとこにも感じるものが。「夢」という言葉は、喜びや希望といったイメージを含みますが、一方で、儚さ・喪失といったイメージも喚起させます。まさに、「あなた」の存在は僕にとっての「夢」であり、希望と儚さの両側面を備える象徴ではないのかなと。
- 「僕を見つめて そっと笑って / 瞳閉じてもまだ 伝わる温もりが たしかにあるのに」
冒頭で、「目に見えない」から「信じない」と言っていた「僕」を安心させてくれたのが、「あなた」の存在そのものだったのでしょう。それが「たしかに」そこにあった。けれども、それすらも儚く感じてしまう。いつか必ずもたらされる終わりに不安を感じざるを得ない。悲しいですね。
その手に触れて 心に触れて
ただの一秒が永遠よりながくなる 魔法みたい
あなたが泣いて そして笑って
ひとつだけの愛が 僕のハートに 今 じんわりあふれる
- 一番のサビに返ってきます。僕にとって、ここでの「ただの一秒が永遠よりながくなる」の意味は、先のものに比べてずぅっと重たいものに感じられます。「あなた」との時間が儚いものなんだと気づいた「僕」は、ふたりで過ごせる時間をできる限り大切にしますよね。そうすると、「ただの一秒」の意味が変わってくるんじゃないでしょうか。
- 「あなたが泣いて そして笑って」
もうここまでくると、泣くとか笑うとかいうのも「あなた」の命を感じること、そのものに繋がります。さらに言えば、「命=時間」とも解釈できますしね。なんか、一秒の儚さの重みを痛切に感じます。 - そして最後。「ひとつだけの愛が 僕のハートに 今 じんわりあふれる」
おぉ。「ひとつ欠けたままの僕のハート」は「ひとつだけの愛」を湛えてあふれんばかりに満たされました。「ひとつだけの愛」ってのはなんなんだろう。あなたからの愛、あなたへの愛、どちらもひとまとめにしているのかな。まぁなんにせよ、ラストはほっこり終わってくれてよかったよかった。
冗長な解釈を書き連ねてきましたが、最後にもうひとつ付け加えるとしたら、「今・ここを生きろ」ってメッセージもあるかなぁと。未来の別れや終わりをどんなに怖れても、それらは必ずやってきます。未来を憂いても、未来は変わらない。変えられるのは「今・ここ」だけ。
だから、曲中で「僕」の思いは色々と揺れるけど、最後は「"今" じんわりあふれる」と歌った。未来を色々と不安に思うこともあったけど、「今・ここ」で「あなた」と生きる道を選んだ。そういう感情の変化にも感動しました。
さてさて、、、長くなりました。
お読みいただきありがとうございました。
おしまい